

自己肯定感とは、シンプルにいうと「自分の存在はOK」という感覚のことです。
自分の存在を肯定する感覚のことで、それによって他者との比較や他者からの評価によらず
自分自身の興味・関心・好奇心に従って自発的に物事を進めるためのベースになります。
self-esteem,、self-confidence、self-affirmation、self-respectといった英語を自己肯定感と訳すことがありますが
self-affirmationが日本語の感覚に近い感じがします。
それは、自己肯定というのが、自信や自己への敬意・尊敬・尊重というよりは
自己の存在をただ受け入れ肯定する感覚、だと私は考えるからです。
ここでは、自己肯定感の提唱から簡単にまとめてみたいと思います。
「self-esteem(自尊感情)」という概念をはじめに提唱したのは、
アメリカの心理学者 ウィリアム・ジェームズ(William James) です。
「self-esteem」は自尊感情や自己肯定感と訳されます。
訳としては自尊感情の方が近いものだと思いますが、自己肯定感の要素にも触れている提唱であったのだろうと思います。
現代の日本語の自己肯定感とは区別されるかもしれません。
彼は1890年に出版した著書『心理学原理(The Principles of Psychology)』の中で、self-esteemについて論じています。
ジェームズは、self-esteemを「達成」と「期待」の比率として説明しました。
具体的には、self-esteemは以下の式で表されると述べています:
self-esteem = 達成 ÷ 期待
つまり、個人が自分の目標や理想にどれだけ近づいているかの感覚が、self-esteemを形成すると考えられています。
ジェームズが考えたself-esteemは成功や失敗で変動するものでした。
そして、self-esteemをいい状態に維持したり、高めたりするにはどうしたら良いかということを考えたわけです。
self-esteemを高めるための方法の一つとして、今の現実を自己受容するということが提唱されています。
この自己受容的な側面が、自己肯定感の感覚にあたると考えられます。
その後、20世紀に入ってからこの概念は多くの心理学者によって研究され、特にカール・ロジャース(Carl Rogers)やナサニエル・ブランデン(Nathaniel Branden)といった心理学者が自己肯定感の重要性をさらに広めました。
ロジャースは、自己受容と自己肯定感の関係を重視し、ブランデンは自己肯定感を個人の幸福や成功における中心的な要素と見なしました。
現在、自己肯定感は教育、心理療法、自己啓発など幅広い分野で重要視されています。
カール・ロジャース(Carl Rogers)は「自己肯定感」という言葉を直接定義することはしていませんが、彼の理論全体が自己受容や自己概念の肯定的な側面を重視しており、現代の自己肯定感の概念に通じるものがあります。ロジャースは人間性心理学の重要な理論家であり、特に「自己概念(self-concept)」と「自己受容(self-acceptance)」に関する議論を展開しました。
ロジャースの理論に基づく自己肯定感に関連した解釈は、次のように考えられます。
ロジャースは、個人が自分自身を無条件に受け入れることが重要だと強調しました。
ロジャースの「無条件の肯定的関心(unconditional positive regard)」は、クライアントの話を、良い悪い等の判断や評価をせずに聴くことを意味しています。これは単に相手の言葉を聴くだけでなく、その人の存在を価値あるものとして受け入れる心的態度を表しています。
そして、そのような聴く姿勢が、クライアント個人が他者からの評価や条件付きの承認に縛られることなく、自分をそのまま認められるようになることを目指しているのです。 これは、ありのままの自分を認め、愛すること、そして、自分の strengths and weaknesses を受け入れることを意味します。
ロジャースは、この『無条件の肯定的関心』が、セラピストとクライアントの関係性だけではなく、あらゆる人間関係において重要だと考えていました。
親子、友人、恋人、職場の仲間など、様々な間関係に適用出来ると考えたのです。
ロジャースによれば、自己概念と理想自己が一致している状態は「心理的健康」の指標となります。この心理的に健康な状態にある人は、自己肯定感が高く、自己受容ができていると言えます。逆に、自己概念と理想自己の間に大きなギャップがあると、自己肯定感が低くなり、不安や葛藤、自己評価の低下を引き起こす可能性があります。
自己一致を促進するためには、自己への気づきを深め、自分の感情や欲求を正直に受け入れることが重要です。
ロジャースは、人間が自らの潜在能力を最大限に発揮しようとする「自己実現傾向」を持つと考えました。
これは、人間がより成長し、能力を発揮し、より充実した人生を送るために生来持っている力です。
自己実現の過程において、自己肯定感は個人が自分自身を信じ、成長に向けて進む力となります。
ロジャースは、自己実現が達成されるためには、自己肯定感と同様に、無条件の肯定的関心や共感的理解が不可欠だと考えていました。
ロジャースにとって、自己肯定感は「他者の期待や評価に左右されずに、自分自身を受け入れ、理想の自己に近づくための内なる力」に関連しています。彼のアプローチでは、自己肯定感を育むために、無条件の肯定的関心や自己一致の環境が重要であるとされています。そして、彼の考え方は、現在の自己肯定感の考え方に大きな影響を与えています。
ナサニエル・ブランデン(Nathaniel Branden)は、自己肯定感(self-esteem)を中心的なテーマとして研究し、多くの著作を通じてその重要性と構造を深く探求しました。
彼は自己肯定感を「個人の幸福と成功の基盤」であると考え、自己肯定感を育むことが人間の成長や充実した人生に不可欠であると主張しました。
ナサニエル・ブランデンは自己肯定感を次の2つの主要な要素から構成されると定義しました。
自分が直面する課題を理解し、それを乗り越える能力があるという信念。つまり、「自分は人生において効果的に行動できる」という感覚です。
自分には価値があり、幸せになる権利があるという感覚。これは、自分自身を尊重し、他者からの評価に過度に依存せず、自分の価値を認識する力です。
ブランデンによると、自己肯定感はこれら2つの要素の相互作用によって成り立ちます。
自己効力感が高まることで、自己価値感も強化され、逆に自己価値感が高まると課題に対する自信も増します。
ブランデンは著書『The Six Pillars of Self-Esteem(自己肯定感の6つの柱)』で、自己肯定感を向上させるために重要な6つの実践を提唱しました:
現実に対してオープンで、自分の行動や選択について意識的であること。
自分の長所や短所を含めて、自分自身を無条件に受け入れること。
自分の人生に対する責任を引き受け、自分の選択や行動に対して主体的であること。
自分の信念や価値観を尊重し、それを表現する勇気を持つこと。
明確な目標を持ち、それに向かって行動すること。
自分の価値観や信念に忠実であること。言葉と行動が一致していること。
ブランデンは、自己肯定感を「心理的な免疫システム」と表現しました。
彼によれば、自己肯定感が高い人は人生の困難に柔軟に対処でき、自分の失敗や批判を建設的に受け止めることができます。
また、低い自己肯定感は不安や抑うつ、自己破壊的な行動につながる可能性があると警告しています。
彼のアプローチは、自己肯定感を単なる感情や一時的な自己評価ではなく、日々の行動と選択によって培われる持続的な心理的資質として捉える点が特徴です。
多くの日本人研究者は、日本文化特有の自己肯定感の課題にも注目しています。
例えば、「謙虚さ」を美徳とする文化や、「失敗を恥じる」社会的風土が、自己肯定感の育成を阻害する要因となる可能性を指摘しています。
このような課題を解決するために、教育や家庭での対応策が研究されています。
日本では、心理学や教育学の分野で自己肯定感の重要性が広く認識されるようになり、特に子どもの発達や教育における実践的な取り組みが進められています。
諸富祥彦先生、榎本博明先生、成田奈緒子先生などがその代表例であり、彼らの研究や活動は日本における自己肯定感の理論と実践を深める重要な役割を果たしています。
諸富祥彦氏は、臨床心理学者であり、教育やカウンセリング分野で自己肯定感の重要性を説いてきました。彼は特に、子どもの教育現場における自己肯定感の育成に注目しています。
理論的背景
諸富氏は、カール・ロジャースの来談者中心療法を基盤とし、無条件の受容が自己肯定感を高める鍵であるとしています。
主張
「人はそのままで価値がある」という感覚を子どもたちに伝えることが、健全な発達において重要であると強調しています。特に、自己肯定感を傷つけない教育環境の整備を訴えています。
榎本博明氏は、心理学者であり、自己肯定感の育成に関する研究を行っています。
彼は、現代社会の中で日本人が自己肯定感を育てることが難しい背景についても分析しています。
理論的背景
榎本氏は、自己肯定感が「他者との関係性」の中で構築されることを重視しています。
また、日本特有の文化的要因(例:謙虚さ、同調圧力)が自己肯定感の発展にどのように影響を与えるかについて考察しています。
主張
自己肯定感を高めるためには、まず「他者の目を過度に気にしないこと」が必要であり、自己を肯定する内発的な視点を養うべきだと述べています。
成田奈緒子氏は、小児科医であり、「自己肯定感を育む子育て」をテーマに活動しています。
彼女のアプローチは、医療や発達心理学の視点から、自己肯定感の育成が子どもの精神的健康や学力に与える影響に注目しています。
理論的背景
成田氏は、脳科学や発達心理学の成果を活用し、子どもが「失敗しても大丈夫」という安心感を持つことが自己肯定感を育む基盤であると主張しています。
主張
子どもの失敗や努力を親が肯定的に受け止めることが、自己肯定感を高める鍵であるとしています。
また、社会的な競争やプレッシャーが自己肯定感を低下させるリスクについて警鐘を鳴らしています。
矢野宏氏は、教育心理学者で、学校教育における自己肯定感の育成に力を入れています。
彼は特に、自己肯定感が学習意欲や人間関係に与える影響について研究しています。
理論的背景
自己肯定感を「自尊感情」と「自己効力感」の2つに分け、これらを教育の中でどのように育むかを具体的に探求しています。
主張
矢野氏は、「子どもの成功体験を増やすこと」や「自己の価値を認めるフィードバック」が自己肯定感を高めるために重要であると提言しています。
異論もあるかもしれませんが、現代の心理療法において、自己肯定感(self-esteem)は
「自分自身に対する全体的な評価や感情的な価値の感覚」として定義されることが一般的です。
この概念は、個人の心理的健康や幸福感、対人関係、ストレス対処能力などに深く関係しています。
具体的には、以下のような側面で捉えられています。
1.自己受容と自己価値感(Self-Acceptance Self-Respect))
自分自身をありのままに受け入れ、自分には価値があると感じること。欠点や失敗を含めて「そのままの自分で大丈夫」と思える感覚が基盤となります。
2.自己効力感(Self-Efficacy)
自分が目標を達成したり課題に取り組んだりする能力があるという自信。これは自己肯定感の重要な構成要素の一つとされています。
3.内面的な安定感(Inner Stability)
外部からの批判や評価に過度に影響されず、自分自身を肯定的に捉えられる心理的安定性。これは自己肯定感の健全さを示す重要な指標です。
ここまで、自己肯定感のはじまりから、どのように発展してきたかをまとめました。
私は、自己肯定感をシンプルに直感的にわかりやすく表現すると
「自分はOKだという感覚」
だと思います。
「自分はOKだという感覚」には、以下のようなことを含みます。
・自分自身を受け入れること。
・他人の評価に依存せず、外部の評価に左右されない、自分の内側から湧き出る自己尊重の感覚。
・自分の存在そのものに対する肯定的な感覚。
そして、健全な形で「自分はOKだという感覚」になると
本来持っている好奇心や成長意欲が自然と発揮され自己効力感も持つことが出来る状態になるのだと考えます。
自己肯定感は、幼少期に育まれるのだと思います。
そして、もし幼少期に育まれる機会を奪われてしまったとしても
気づいたときに取り戻すことができるものでもあると考えています。
自己肯定感を育み、自分のコンパスに従って納得感のある豊かな人生を歩んでいきたいですね!